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2007年1月11日 (木)

今なぜ「海洋基本法」なのだろう?(その4)

国(建設省)が「海洋を自然公物として認識する」ということを宣言するってどういうことだろう?

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(1)沿岸域管理法案=「海域管理法」(仮称)の内容について

 国が海洋を管理することを、基本法という宣言法的計画法によって理念を示しながら、その理念を支える、国が海洋を管理する根拠と具体的な管理計画を示した「海域管理法」の制定とをワンセットにして、この提言がなされています。

 今法案作りが急がれている「海洋基本法」も、1970年初頭当時の「海洋開発基本法」(案)から「開発」が取り除かれているといっても、国の海洋を管理する理念の骨格は十分に研究されてきたわけであり、この提案と基本的には同じ国土交通省あるいは国のスタンスが投影されると考えられますから、ここから読みとれる国の意図や手法を考えるうえで、参考とされてよい資料だと思います。

 むしろ、基本骨格の提案文ということで、いたずらな専門家しか理解できないような暗号のような条文よりは、よく示されているということで、あえて、全文を引用してみました。

2.海域管理法(仮称)の立案

(1)法制定の必要性

 ① 港湾法等の特定目的からする特別法の適用がある場合のほか、海洋(海底)は、建設省設置法第3条第3号および第8号の規定による建設省所管の国所財産として都導府県知事が管理している。しかしなから、国有財産法は、財産的管理に主眼を置いた一般法であるため、海域の無断占用、不法占拠等について監督処分等の行政処分による解決ができないこと、海域の占用等の許可条件、その取消し、許可対象の内容、占使用料等が不統一であること、同法上の使用手続きが煩雑であるとともに使用料が原則として国庫に帰属し、実際の管理者に帰属しない不合理さがあることなど、同法による管理では、現実化した多種多様の海洋利用に対処しきれない。
 このため、人類共通の財産としてかけがえのない海洋について、これを本来の自然公物(公共用物)であるとの認識に立脚して、適正な管理を実施するための原則的な法制が必要である。

 ② 海洋は、従来、低度利用であったために、一般には自由使用に放任しても、さして社会的混乱、問題を生じなかったが、海洋鉱物資源の開発をはじめ、臨海工業地帯の造成、海洋レクリエーション施設の整備等各種の利用開発が活発になってきたことに伴い、利用者相互間の調整、秩序だった利用、自然環境の保全等について、統一的なルールを必要とする段階に達している。

 ③ 海洋の利用開発がひとたび雑然と錯綜して行なわれた場合、その再開発整備は非常に困難であり、また破壊された海洋の自然環境を復元することは不可能といえる。このため、海洋の利用開発を整序づけ乱開発を防止し、かけがえのない海洋環境を保全するため、とりあえず海域内の土地の占用、工作物の設置等比較的は握しやすい管理態様からアプローチした法制の整備か急がれる。

 ④ 次項の海洋開発基本法の前提条件として、また、同法による秩序だった利用開発を確保するためにも、海洋の管理を充実強化する法制を整備する必要がある。

(2)法の概要

 ① 海域が自然公物(公共用物)であるとの認識に立脚して総合的な海域の管理制度を定めることにより、その有効利用および環境の適正な保全を図ることを目的とする。

 ② 管理の対象としての海域は、領海全域およびこれと一体として管理することが必要な自然公物たる海浜地(陸地)とする。

 ③ 海域の管理の主体として海域管理者を置く。
  海域管理者は、都首府県知事とする。

 ④ 海域管理者は、公共用物としての海域の特質に即して、海域の管理を適正に行ない、かつ、海域の有効な利用を促進するため(管理行為の基準として)、海域管理方針を定める。

 ⑤ 海域は公共用物として一般公共に秩序だって利用させるものとし、このため、海域管理者の許可を受けなければならない行為は次のとおりとする。

イ)特許行為として   海域内の土地の占用/土石等の採取
ロ)禁止の解除として  工作物の新築、改築または除却/土地の堀さく、盛土その他/土地の形状を変更する行為/その他管理のために支障とする行為

また、海域管理に支障を及ぼす行為を行なった者に対する必要な罰則を設ける。

 ⑥ 海域管理者は、海域管理上その他公益上の必要がある場合においては、許可に必要な条件を付し、許可を取り消し、変更し、その効力を停止し、条件を変更するなど必要な監督処分をすることができる。

 ⑦ 海域監理員制度を設ける。

 ⑧ 海域管理者は、海域の公共利用および環境保全のため必要な調査および海域の整備のための事業を行なうことができる。

 ⑨ 海域整備事業に要する費用、その他管理に要する費用は、その一部を国が負担する。

 ⑩ 海域管理者は、その管理する海域内の土地の占用および土石等の採取について占用料または採取料を徴収することができる。

(3)問題点

 ① 法案の立案上さらに検討を要する事項のうち、主なものは、次のとおりである。

イ)河川区域、海域保全区域、港湾区域、港湾隣接区域、公告水域、漁港区域、保安林、保安施設等、現在他の法律に基づき特定目的により管理されている分野についての調整措置のあり方

ロ)海域管理者を一元的に都道府県知事とすることの是非、さらに特定の海域について共同許可等の調整制度の具体的なあり方

ハ)海域管理方針は、国土計画、地方計画等法律に基づく計画その他の国の定める方針に適合したものでなければならないが、さらにその具体的内容

ニ)海域管理者の許可を受けなければならない行為としての管理のために支障となる行為の具体的内容

ホ)海域管理者が行なう海域整備事業の具体的内容およびその推進策

 ② 海洋(海底)は、建設省所管の国有財産として、都道府県知事が管理しているが、新法制が整備されるまでは、責任官庁として今後の海洋の適正な管理に支障を及ぼさないよう国有財産としての管理をさらに厳格に行なうべく、管理基準を策定するとともに、その溢路となっている都道府県の執行体制を強化する必要がある。

(2)「海洋開発基本法」の内容について

 これも、資料(1972)からの引用です。

3.海洋開発基本法(仮称)の提唱

 海洋の利用開発を総合的計画的かつ積極的に推進するためには、国等による各種の施策の実施、民間の開発エネルギーの誘導、規制措置が必要である。これらが一せいにス夕ートしようとする現時点において、政府施策の統一的なルールを確立し、秩序ある海洋開発を進めるため、海洋開発基本法制を整備することが適切である。

(1)法制定の必要性

 ① 海洋の本来の機能と調和した利用開発のあり方を明確にし、これを基本として、各種の個別プロジェクトが相互に調和し、整合性のとれた海洋全体の利用開発を推進するため、海洋の利用開発に関する基本理念を確立する必要がある。

 ② 国土が狭小であるうえ、国内資源の乏しいわが国にとっては、海洋を有効かつ適正に利用開発することは重要な国民的課題であり、このため、海洋開発をナショナルプロジェクトとして位置づけ、国および地方公共団体の先導的役割を明確にするとともに、海洋開発に向う民間エネルギーを適正に誘導し、方向づける必要がある。

 ③ 海洋開発の活発化に伴い、各省庁において各種の施策が積極的に講じられる動きがあるが、これらの施策は海洋全体の有効な利用と適正な環境を確保するには必ずしも十全ではない。このため、政府施策について統一的ルールを確立し、その整合性を確保する必要がある。

 ④ 海洋の利用開発の現況および将来計画ないし将来構想をみると、海域によりその状況に濃淡があり、内容も多様で、かつ、流動的であるなど過渡的状況にあるので、まず特定海域を中心として全海域について海洋の利用開発の基本的方向を定める必要があり、また海洋開発を推進させるための前提となる総合的な基礎調査、科学技術、技術者、情報収集等はまだ不十分である現状をふまえ、海洋開発を総合的に推進させる諸施策を一体的に講ずるため、計画法的な基本法体系が必要である。

 ⑤ 国土総合開発法、首都圏整備法、都市計画法等既存の法体系が整備されているが、これらは現在までのところ陸域の開発整備に主眼を置いた運用がなされてきた実態にかんがみ、この際、海洋開発のわが国における重要性を十分認識し、海洋の特性を考慮し、海洋の有効利用を総合的に推進し、適正な環境を保全するために、特定法の制度が望ましいと考える。

(2)法制定の提唱

 新規の行政分野である海洋開発の推進にあたっては、単独省庁のみで対処することは、困難かつ非効率であるので、各省庁による協力体制の樹立が不可欠の前提となる。海洋開発基本法の作成についても、建設省としてはその所管にこだわることなく、全政府的な協調と国民的合意の下に立案作業を進めるべきものと考える。
 建設省は国土計画の主務管庁として、海洋スペースの計画的利用を目的とする計画法的色彩を加味した海洋開発基本法について、その実現を積極的に主張すべきであり、場合によって各省庁間の協調関係をきずきつつ、その立案に着手することを考慮すべきである。なお前項の海域管理法は、本来海洋の利用開発を秩序づける海洋開発基本法と一体的に機能して、はじめてより適正な海域の管理を実施するととができるものであるので、この意味においても、海洋開発基本法の制定を積極的に推進すべきものと考える。

(3)法の概要

 ① 海洋の自然的条件を考慮して、経済、社会、文化等に関する施策の総合的見地から、海洋の利用開発に関する基本的方向を定めるとともに、海洋の合理的な開発整備および適正な保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、海洋の有効利用の総合的推進を図ることを目的とする。

 ② 海洋資源および海洋空間の利用開発を積極的に推進するものとするが、海洋それ自体が人類共通の財産としてかけがえのないものであるので長期的な視野の下で、海洋環境との調和を基本として、計画的かつ総合的に推進することを基本理念とする。

 ③ 国および地方公共団体は、先導的役割の重要性を認識し、基本的かつ総合的な施策を策定し、実施する責務を有することを規定する。
   国が、この法律の目的を達成するため必要な財政上および金融上の措置を講ずることを規定する。
   国民は、これら施策に協力する等海洋の有効利用の推進に奇与するよう努めるものとする。

 ④ 国は、海洋開発審議会の調査審議を経て、海洋の合理的な開発、整備および適正な保全に関する海洋利用基本方針を作成する。

 ⑤ 国は、次の措置を講ずるものとする。

イ)海洋の自然環境および生物環境に関する総合的基礎調査の実施、調査体制の整備、調産技術の向上等の措置

ロ)海洋の利用開発に係る科学技術の振興に関する措置

ハ)海洋に関する情報の収集管理に関する措置

 ⑥ 関係各行政機関の長は、海洋利用基本方針を基本として、海洋環境の保全、海洋鉱物資源の開発等その所掌するものに関し、海洋開発整備計画を作成する。

 ⑦ 都道府県は、海洋利用基本方針および海洋開発整備計画を基本として、都道府県海域開発審議会の調査審議を経て、都道府県海域総合開発計画を作成し、国の承認を受ける。

 ⑧ 国が指定する特定海域(相当広範囲な海城において現に複合的な利用によって競合が生じている海域または大都市に隣接する海域で、多目的な開発整備を一体的に推進する必要があると認められる海域)について関係都首府県は、特定海域総合開発計画の案を作成し国がこれを決定する。
 ⑨ 関係各行政機関の長は関係都道府県に対して、

イ)その所掌する事項に関し、都道府県海域総合開発計画の作成上必要な助言

ロ)協議によって、特定海域総合開発計画の作成上必要な助言または勧告をすることができる。

 ⑩ 建設大臣は、海洋の有効利用および海洋環境の適正な保全を図るため、別に定める法律により海域の総合的な管理をする。

 ⑪ 国土総合開発計画、北海道総合開発計画、首都圏整備計画等と海洋利用基本方針、海洋開発整備計画および海域総合開発計画との調整措置を規定する。

(4)問題点

 ① 新規の行政分野である海洋開発は、各省庁にわたっており、行政施策について、その整合性を確保し、海洋開発を総合的に推進させる施策を一体的に講ずるための全政府的な協力体制を樹立する必要がある。このため、内閣総理大臣が海洋利用基本方針を定めることとし、一方では、これを基本としつつ、目的別事業別の海洋開発整備計画については各省庁において作成してきた経緯と蓄積された経験を尊重し、各省庁において作成することとしたが、同様の事情にある海洋開発審議会と各種審議会等との関係をも含めて、さらに検討する必要がある。

 ② 海洋開発基本法のうち、特に計画手法の分野について、国土総合開発法と類似しており、同法との関係を中心に既存の法体係との関係を、さらに検討する必要がある。

 ③ 海洋スペースの有効な利用開発を促進し、適正な規制のもとに良好な海洋環境を確保するため、海洋における地域地区制といった法制のあり方について、さらに検討を進める必要があろう。

 ④ 海洋開発の推進の前提となる海洋環境の総合的な調査を計画的に実施するため、海洋開発基本法と一体となって機能すべく、測量法の整備、海洋調査法等の立案の必要性等について、さらに検討する必要がある。

 1972年法案がなぜ上程されなかったのだろう―農水省(水産庁)の当時の反対理由……今なぜ「海洋基本法」なのだろう?(その5)につづく

 MANA(なかじまみつる)

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