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2007年2月18日 (日)

コモンズとマイナー・サブシステンス(菅豊著「川は誰のものか」を読む)

「川は誰のものか」の著者、菅豊さんに先日インタビューしてきました

 Kawawadarenoka_2 [季刊里海]第2号の編集過程の取材舞台をご紹介します。第2号から、この1年ぐらいの間で評判になった「里海」とかかわりのある、海と川と水辺を題材にした単行本・雑誌記事を10件ほど紹介することにしています。その1冊が、2006年1月吉川弘文館から発刊された菅豊著『川は誰のものか 人と環境の民俗学』です。

 この本は、新潟県の山形県に近い山北町大川郷の人々と、ムラを流れる河川、大川と近世以来から深いつながりをもって暮らし続けてきた、まさにそのことをテーマに、読みやすい文体で描いています。毎年秋になると日本海から遡上してくるサケを「コド」という昔ながらのシカケで捕獲する漁法:コド漁と、その漁を続けるムラビトたちの川と人との一体となったかかわりの意味するものを、20年もの長いフィールドワークの成果として読者に提示してくれました。

 本書が描く「川と人との民俗学」のテーマは、近年、環境と経済・社会を理解するための重要なキーワードとなっている「コモンズ」という概念を切り口として描かれています。いわば、伝統社会経済の仕組みの理解をとおして、現代社会経済が発展していくときのひとつの道筋を読者にしめしてくれているような、とても刺激的な内容です。現代にとっての民俗学が果たす役割とは何かというような、小難しいテーマを云々するよりは、「日本」におけるコモンズ論を理解するカギを読者それぞれのテーマの読み方において気づかせてくれる、その意味で、格好のコモンズ論入門の書という位置づけを与えてもよいのではないかとおもいます。

 紙面で短評する約10冊の本の中から、著者に直接、その本が誕生したエピソードを聞きながらまとめる「著者に聞く―里海インタビュー」を載せるつもりです。「川は誰のものか」を執筆された菅豊さんを、東京大学東洋文化研究所の研究室に、2月1日、訪問し、約2時間ほどお話を伺ってきました。菅さんは同研究所助教授で、専門は民俗学ですが、最近、とくに、緻密なフィールドワークを通してコモンズ論の数多くの論文を発表されています。

 今回は、「川は誰のものか」で描かれた伝統的な川と人とのつながりという「コモンズ」=「共的世界」が、現代の私たちが生きる「世界」に、どのように投影してきているのかを、できるだけわかりやすい対話形式でまとめてみたいと考えています。

 キーワードは、ずばり次の3つの言葉です。「コモンズという共的世界」「マイナー・サブシステンスの概念とは何か」「現代なぜレジティマシー(≒正当性)を論じなければならないか」です。じつは、この三つのキーワードは、「里海」をあえて海や水辺の世界に位置づけて論じようとするときに、あい通じる「窓」であり「扉」なのです。いろいろな人に登場していただこうとおもいます。

PS:インタビューのさわりの部分を菅さんに確認していただき、本ブログで紹介したいとおもいます。

インタビュー記事(その2)へ

By MANA(なかじまみつる)

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