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2008年4月20日 (日)

網取湾で起きている漁業権設定の動きとは?

真珠養殖漁業権免許の申請の動きと現地の反応

第2番目の情報とは、沖縄県西表島の網取湾で起きていることです。これまで共同漁業権以外の漁業権が設定されてこなかった海域(網取湾)に真珠養殖漁業権を新たに設定したいと考えた、真珠会社(R)と、地元関係漁協(A)、そして、地元漁業者(B:複数)、ダイビングなど観光事業者(C:複数)などの対応についてです。漁業権の更新年(20年9月)にあたり、いまだ話し合いが継続中という余地も残されている事例でもあるので、ことの内容の概略がつかめる程度のレポートにとどめ、問題の本質にだけは迫っておくことにします。

まず結論(途中経過ですが)のみを、書いておきましょう。R社は、前回の漁業権更新(昭和15年9月)時においても、同じ網取湾海域において、真珠養殖漁業権(区画漁業権)の免許を申請したが、

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平成15年2月14日に八重山地域で公聴会を開催しておりますが、そのときに公聴会で意見を述べられた方たち、Yダイビング協会ですとかT大学の沖縄地域研究センター、環境省の自然環境局の沖縄奄美地区自然保護事務所、それからY漁協組合員等の方から漁場計画について、網取に真珠と真珠母貝の漁場を、養殖の漁業権を免許するという案についてそれぞれ反対の意見が出されております。これらの意見を踏まえて、海区漁業調整委員会は公聴会の状況を持って帰って海区漁業調整委員会を開いて、海区漁業調整委員会としての最終的な答申の意見を決定し、県にその旨を答申したということで、それを受けて県が漁場計画案から外したということでございます。(平成16年3月10日沖縄県議会予算特別委員会議事録より、県水産課長答弁。:ネット公開サイトより関係部分を抽出。固有名詞はいちおうアルファベットの略称としました。)

上記理由により、その申請は通ることがなかったという経緯があります。そして、今回の更新時も、R社は、同じ海域の区画で、真珠養殖漁業権免許の申請を行おうとしたわけです。ただ、前回の申請却下の経過をふまえて、「Aの合意をとりつけて臨んだため、免許申請は、通るのではないか」(私に第一報の情報を提供してくれた方の懸念の言。)ということから、いく人かの情報通の方に連絡して確認してみると、おおよそ、次のようなことがわかってきました。

まず、3月某日開かれた、この件に関する公聴会においては、やはり、地域の反対意見が占め、けっして、地先の共同漁業権を管轄する地元漁協が、無条件で賛意を表していることではありませんでした。

地元漁協では、確かに、R社よりの真珠養殖漁業権申請について、地域振興のために貢献したいという提案には好意的に受け止めたようですが、網取湾及びその周辺地域で漁実績のある関係地区漁業者の同意を前提とする、という条件をつけての意見であった、というのが事実のようです。

しかし、R社は、公聴会が開かれる前までには、関係地区の漁業者個々人との意見交換と合意の手続きを行っていなかったことが判明します。観光利用の関係事業者は、反対の以降を強くもっていて、「地域漁協が賛成している」というのは、実態として事実ではなかったということになります。新たに免許を受けたいと云う参入者にとって、自分にとって都合よく話を聞いてくれて賛意を示してくれる人の合意を取り付けて、「地域も賛成してくれている」というのは、地域全体の合意手続きを踏んでいることには、ほとんどなっていないということのよい例だったのです。

「漁業調整委員会で審議にかかる以前に申請は取り下げざるを得ないでしょう」という沖縄の漁業権事情に詳しい知人の個人的意見のとおりに事態は進んでいったというのが、現在までの経緯です。

この網取湾地域は、西表島と石垣島に挟まるように「石西礁湖自然再生」構想(環境省管轄事項)に基づき、わが国最大規模の珊瑚礁を保護し、再生計画が進められている地区に隣接しています。網取湾の南隣側には、わが国で唯一「海域自然環境保全地域」に指定されている崎山湾(128ヘクタール)があり、網取湾も崎山湾に劣らず、貴重な自然域であることは、同構想を広報している「石西礁湖自然再生協議会」(地区漁協・漁業者・漁業関係者・観光事業関係者・地区宿泊施設関係者・自治体などで構成)ホームページを参考にしてください。

規模の大小に関わらず、新たに海域の利用や開発をしようとするときの「地域」の合意手続きを踏むという作業は、関係漁協の合意をとることだけで、ことたれり、とすることは、大いなる誤解であることを知るべきでしょう。この網取湾を含む海域は共同漁業権第24号という石垣島と西表島全域を含む一つの水域で設定されています。この水域は石垣市にある八重山漁協一つに免許されていますが、地域ごとにそれぞれ利害関係を代表するいくつもの輻輳した漁業者のグループ(ないし個人)が存在しますから、地域の合意をとるということは、関係水域の利用や開発の行為で損害(影響)を直接こうむる関係漁業者の合意が最優先でなければなりません。

近年、漁協の合併により、県内一単協となったり、広域の水域を一つの漁協が管轄し、免許を受けることが多くなってきていますから、沖縄県の事情だけではなく、本土各地区においても、合併以前の昔から地先の水面を利用管理してきた関係地区(旧漁協・支所など。漁業法における「部会」。)ごとに合意をする原則を再確認したり、広く知ってもらうことが必要になるのだと思います。

By MANA:なかじまみつる

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