舞鶴からこんにちわ!!
中村禮子さんからお便りをいただきました。
「先日(25日)、京都で第30回世界健康フォーラムが国際会議場でひらかれ、参加してきました。大変良いお話が聞けたので、と文章を書きました。食、体、心のハーモニーという、コンセプトが気に入りました。
夫は8月からの世界一周航海が終わり、中旬に帰ってきます。私はJICAのシニアボランテイアーで来春からモロッコに2年間赴任することになり、1月からの研修を前にフランス語の勉強を始めておりますが、なんとも脳が固まっているもので、大変です!」
添付ファイルのレポートを載せておきます。このフォーラムは、1月10日のNHKで全国放送されるので、その事前紹介レポートとしても簡潔に記され、「健康な心」からつくられる社会文化の大切さを考える機会になればと考えました。
《舞鶴からのREIKO’S REPO》
世界健康フォーラムに参加して
……中村禮子
真っ赤な紅葉が彩を添えていた京都国際会館のメインホールで、NPO法人 世界健康フロンテイア研究会が主催する第30回世界健康フォーラムが開催された。それは世界保健機構(WHO),武庫川女子大学国際健康開発研究所が共催し、国連教育科学文化機関(UNESCO)、NHK,京都府、京都市、朝日、日本経済、京都の新聞各社などなど多くの団体の後援を得ての、大変大きなイベントであった。
そのテーマは「世界の健康は食文化から」<寝たきり長生きから健康長生きへ>ということであった。参加者数は2000名を上回り、その9割方が女性であった。昨年の参加者は2700名で女性91%、男性6%で、年齢構成は60代34%、50代29%、40代18%、70代13%、30代4%、20代2%であり、その53%は主婦ということで、健康に感心を持つ人々のことが伺える。平日の昼間の開催ということも大きな要因である。
なお、このフォーラムについては来年1月10日に、NHK教育テレビ、日曜フォーラム(18.00~19.00)で放映予定である。
WHO西太平洋地域事務局長、尾身茂氏の講演、UNESCOからのメッセージ、WHO国際共同研究からのメッセージに続き、オーストラリア先住民の方によるアボリジナルの生活習慣病の現状と栄養によるリスクの軽減の研究発表や脳科学者の茂木健一郎氏の記念講演があった。脳科学の最新の研究結果で大変興味深いお話があったので紹介したい。
私たちの脳には、最近分かってきたこんな特性がある。一言でいうならば、脳とは楽観的に生きないと活性化されないというのである。それはこれから起こる不確実なことに対して、人がどう感じるかが問題のようだ。つまり、これから起こる不確実なことに対して、不安を持つと脳は対応ができないので、不活性となるが、それをわくわくと楽しみに考えることにより、脳が活性化されるというのである。脳には本来そのような能力が備わっているそうである。
それは、楽観的に考えられる人の心の中には安全基地が存在するからだそうだ。この安全基地とは子供の時にはその所在は親であるが、大人になると安全基地が本人の中にできてくるのであるが、不安に思う人はそれが十分にできていないということであった。しかし、諦めてはいけない。過去の記憶を見つめて、安全基地を育てることができるのである。そういえば、たくさんのことを経験している人はしていない人に比べると、これから起こることに対しての予測が可能になり、楽観できるからであろうか、そんな気がした。
また、笑いとは人生における辛いことと悪いことをプラスに変えていくように作用するというのだ。何か大事なことを教わった気持ちになった。そういえば、ヨガで笑いというのがあり、大声をあげて笑うその業はそういう効能を知ってのものであった、と思うとインドの先達を敬服したい。
脳の健康と体の健康は相関関係が大変大きく、美味しいものを食べることは脳にとっての栄養になるとのことだ。それは美味しいと思って食べることにより、脳が快感を感じると出てくる脳内モルヒネともいわれている物質、ドーパミン、セロトニン、βエンドロフィンなどが分泌され、より快感になる。また、一人で食べるよりも誰かと一緒に食べることにより、より美味しく感じられることは誰もが経験していることであるが、それは人間の脳の前頭葉(額の部分)にミラー(鏡)ニューロンという神経細胞があり、これが相手のしていることを自分がしていることのように感じる共感回路が活性化されるからであるという。さらには、脳をその気にさせるプラセーボ効果(思うことによってそのようになる)もあるという。だから、「病は気から」という言葉も科学的に実証されているようだ。そして、過去を育て、ユーモアのセンスを持って、楽しむ人生が素晴らしいことで、それが長寿につながるという最後の言葉でしめくくられた。
その後、ミレニアムフォーラムとして、「寝たきり長生きから健康長寿へと」と題して、千葉商科大学教授の宮崎緑氏がコーディネーター務め、毎日走っている茂木健一郎氏(脳科学者)、黄な粉、ジャコ、大根おろしを入れたカスピ海ヨーグルトと和食を毎日食べている家森幸男氏(予防栄養医学者・健康フォーラムのオーガナイザー)、ラジオ体操を毎日して、歯の健康を気遣い、すべての歯が健全な横山清氏(日本セルフサービス協会会長)、京大のマサイといわれ、毎日8km走り続けている森谷敏夫氏(運動生理学者)、泳ぎと料理を楽しむ梅原純子氏(診療内科医)の各氏がパネリストとなり、パネルディスカッションが行われた。
実はここに書かれた各氏がされていることは自分の健康法ということで、各氏が冒頭で述べられたことである。健康を保つための努力は、人それぞれにより行われているが、ここではそれぞれの専門分野からの視点に基づいての活発な意見交換が行われた。
現代人は、昭和50年頃に人々が摂取していた一日の平均カロリーよりも300カロリーも少なく摂取しているのに、なぜ肥満や高血圧などの生活習慣病が多いのか。その理由は、生活が便利になったがために消費するエネルギー量が少ないからである、と単純明解な答えである。昔はもっと生活の中で体を動かすことが多かったことは身に覚えがある。
さらに、エネルギー消費量の個人差も大きく、こまめに動く人、活動量の多い人はカロリーの消費量が大きいうえ、そういう人は基礎代謝量(何もしないでも消費するカロリー)も大きいそうだ。座るよりも立つ方がカロリー消費が20%増え、歩くとそれが3倍になる。階段を歩くと平地を歩く時の5倍のエネルギーを消費でき、これは安静時の10倍である。だから、日常の何気ない生活の中で、いかに心がけが必要であるかが良く分かる。もちろん運動ができれば、それがベストであろう。
世界で一番の長寿を実現してきた沖縄からの移住者は、ハワイに移住した人々の中でも、大変健康で長寿の人が多いことが知らされた。それは沖縄の食習慣を持続した結果、高血圧の原因である食塩の一日平均摂取量が日本人の半分である6g、熱帯の豊かな果物により、病気のもとである活性酸素を抑える働きをするビタミンEの摂取量が多く、認知症が少ないことなどが要因である。大豆、魚、野菜をたくさん食べ、バランスの良い食事をしていると説明された。亜熱帯の気候もさることながら、みんなで仲良くいろいろなことを楽しんでいるということも大きな要因であり、元気で長寿の世界を覗くことができた。
脳を活性化するには手先の細かい動きをすること。細かい家事のような面倒なことをすることが、より脳を活性化させることも知った。そして、脳を使う最良なことは体を使うこと、運動を含めてということである。さらに、自分の生き方をどう変えるかということが重要な課題である。それは何もしないで老いるか、喜びと楽しみを加えて老いるかが、自分の人生の鍵を握っている。分かっているようでも、こうしてはっきりといわれると、より心の中に定着する。
パネルディスカッションの結論は野菜、魚、大豆をバランスよくとるというように、食べ物への配慮、運動をすることにより体を丈夫にすること、そして、心を楽しくすることで、食、体、心と大きな三つの要素が互いに関わりあってより良い健康が保たれるということで、それを心に深くとめることができた。帰りの地下鉄は率先して階段を利用して、ポジティブマインドで未来に対して楽観的に生きようと、軽やかな足取りになった。
(2009年12月4日記)
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